90と10の法則
P82 「だからあなたはいまでもひとり」心理学博士ジョン グレイ 著
私たちが現時点で感じる痛みのほとんどは、癒されずに引きずってきた過去の痛みであることが多い。
だから何かで気づくと、過去に経験したのと同じような痛みが蘇る。
解消されずに抑えられてきた昔の感情や、過去の恋愛関係で経験した未解決の感情が、現在の苦痛を増幅する。
現在の心の痛みの90%は過去に由来するものであり、現時点の原因による痛みは、たったの10%なのだ。
だから、苦しい感情を解放できないときは、その原因が自分の考えるところとは違う位置にあることが多い。
私たちはその90と10の法則を、日常生活の短い時間内でも経験する。
例えば外で嫌なことがあったり、不愉快な扱いを受けたり、車の渋滞で動けなかったり、頭痛がしたりすると、1日の終わりに、不愉快感をそのまま家に持ち帰る。
なぜか相手に腹が立つ時は、その原因の大部分が、その日に起きた不愉快な出来事にあるのかもしれない。
その反対に、素晴らしい1日を過ごした時は、相手の態度が少々悪くても簡単に許すことができる。
この法則は、短い時間内の出来事だけでなく、子供の頃と言う、とてつもない長い時間まで遡ることがある。
つまり相手と別れて動揺すると、はるか昔に感じた感情までが目を覚ます。
恨み、非難、冷淡さ、罪悪感、不安感、絶望感、嫉妬などの否定的な感情から抜け出せない時、その苦痛の90%が過去に原因を持ち、現在の原因による苦痛は、わずか10%に過ぎないのだ。
こんな時は、現在の感情を過去に結びつけて考える必要がある。
解消されないままで残っていた過去の感情を、もう一度心の中で体験できれば、癒しのプロセスはずっとスムーズに運ぶだろう。
一般に過去の出来事の方が、現在の出来事よりも対処しやすい。
それは過去の出来事は結果がわかっているからで、自分の過去をより客観的に見つめて、癒す方向で対処できる。
一方で苦しみを感じながら対処し、もう一方で、優しい友人や親のように自分を思いやることができるのだ。
安心して心を開き、現在の出来事に関連して浮かび上がってきた感情を人に話せるようになれば、過去にどんな傷があったかが自然にわかってくる。
現在の苦痛を、同じ苦しみを感じた過去に結びつけられれば、苦痛の解放はより徹底したものになる。